愛犬とのお散歩では、どんなに大人しい子でも、首輪やハーネス、リードを付けることがマナーです。しかし、わんちゃんがどんどんリードを引っ張って、飼い主様の方が散歩をされているような光景、身に覚えがある方も多いのではないでしょうか。わんちゃんが飼い主様のペースに合わせて散歩してくれるよう、対策・対処法をご紹介します。
犬が散歩中にリード等を引っ張ってくるその理由とは?
飼い主と犬の主従関係が逆になってしまっているから
犬がリードを引っ張って散歩をするのは、単純に自分が引っ張れば飼い主様が付いてきて、好きなところに好きなだけ行くことが出来ると学習してしまっているからです。これは、わんちゃんと飼い主様の主従関係が完全に逆になってしまっていることになります。昔から群れで生活をしている犬は、群れで一番強いボスに従い、付いていく習性がありました。同じように、お散歩で飼い主様を引っ張っている子は、自分の方が地位が高く、ボスとして飼い主様を従えているという認識を持ってしまっているのです。これではお散歩のしつけどころか、その他のトレーニングも上手くいかない場合が多いので、早急に対策する必要があります。
また、飼い主様の行動が原因となるケースもあります。わんちゃんがリードを引っ張ることを止めさせるため、または方向転換させるために、飼い主様もリードを引っ張ってしまってはいませんか?わんちゃんは首に圧力がかかると、反射的に前のめりに力が入り、踏ん張ってしまいます。この行動を「抵抗反射」といい、リードを引っ張ってしまう原因となります。
久しぶりの散歩で日頃のストレスを発散させようとしている
さらにわんちゃんにとってお散歩=外の世界は、未知の領域です。普段過ごしている家の中とは違った、地面の感触、景色、匂い、家族以外の生き物との出会いなど、何もかもが新鮮で刺激されることばかりです。そのため、早く先に進みたい!という好奇心から、どんどんリードを引っ張ってしまい、飼い主様のペースに合わせることが難しくなっているのです。
他にも、しばらく悪天候だったり、体調が悪くなかなかお散歩に行けなかった子などは、かなりのストレスを溜めています。久しぶりのお散歩に出ると、日頃のストレスを発散させようとしているため、興奮気味になりリードを引っ張ってしまうのも原因の一つです。
犬が本来持っている狩猟本能が働いている
もともと昔から、獲物を狩るために追跡し、猟犬として育てられたわんちゃんも多いため、その狩猟本能が働き、リードを引っ張ってしまう子もたくさんいます。リードを引っ張らないトレーニングを行う前提として、引っ張る行動は犬として当たり前であるということを知っておきましょう。
引っ張り癖は喉の負傷や咳、吐く原因にも
引っ張りで生じる首の締め付けは非常に危険です
引っ張りで生じる首の締め付けは非常に危険です。わんちゃんの首には人間と同じように食道、甲状腺、リンパ、頸動脈、頸椎といった重要な器官がたくさん通っています。わんちゃんや飼い主様がリードを引っ張ることで首に大きな負担がかかり、負傷してしまうことがあります。主には打撲傷、嘔吐、気管虚脱、喉や頸椎の損傷、甲状腺炎症などです。このような症状がたった一度強く引っ張るだけで起こってしまうほど、わんちゃんの首にはかなりの負担がかかっています。
リードを引っ張った際の犬の首への負荷量
では、リードを引っ張った際のわんちゃんの首への負荷量はどれくらいなのでしょうか。個体差はありますが、その子の体重の0.5~2.5倍もの負担がかかると言われています。これでは、いつ負傷しても不思議ではありません。
また、首の器官への影響だけでなく、眼圧が一気に上昇したり、脳にダメージを与えたりと、最悪の場合は死に至る可能性も考えられます。
引っ張り癖を直すトレーニングは、わんちゃんの健康を守ることにも繋がりますので、しっかりと対策を立てていきましょう。
引っ張り癖を直すための対策・対処法
まずは散歩に行く前に犬を落ち着かせましょう
実はこのしつけは、お散歩前の家の中から始まっています。首輪をつける時から、わんちゃんは嬉しさのあまり興奮したり騒いだりしてはいませんか?興奮したままお散歩開始してしまうとリードを引っ張ってしまうため、まずはわんちゃんを落ち着かせることから始めましょう。
わんちゃんが興奮したら「待て」「おすわり」と指示しましょう。出来るようになるまでは首輪をつけてはいけません。根気よくわんちゃんが静かになるのを待ちます。落ち着いた様子を見せたら褒めてあげて、首輪を装着しましょう。
装着したらいよいよ外へ出ますが、このときわんちゃんを先に行かせてはいけません。主従関係を正すために、飼い主様が先にドアを出て、そのあとにわんちゃんを出すように徹底します。
引っ張ったら立ち止まるようにしましょう
お散歩中、わんちゃんがリードを引っ張ったら、飼い主様はすぐに立ち止まりましょう。これも逆転している主従関係を修正するためです。わんちゃんは前に進もうと引っ張り続けますが、飼い主様はリードをしっかり持ったまま引っ張ったりせず、その場から絶対に動かないようにします。「引っ張っても飼い主様は付いてこず、前に進めない=自分はボスではない」と認識させましょう。わんちゃんが諦めて飼い主さんのもとへ戻ってきたら、アイコンタクトを取りながらしっかりと褒めてあげて、再びお散歩開始です。
引っ張った瞬間に叱るようにしましょう
またわんちゃんがリードを引っ張った場合、その瞬間に叱ることもポイントです。「だめ」や「シッ」といったシンプルな掛け声でOKです。何度も繰り返すことで、「引っ張ると叱られる」「引っ張らず飼い主様に合わせて歩くと褒められる、散歩を続けることができる」と徐々に理解していくので、根気よく続けましょう。リードが緩んでいる状態のときは、わんちゃんが立ち止まったり匂いを嗅いだりなど、好きなようにお散歩させてあげましょう。
また、方向転換したい場合は、飼い主様がリードを「ツン」と少しだけ引っ張り、わんちゃんに指示します。わんちゃんが付いてこない場合も立ち止まって、こちらに来るまで待ちましょう。
リードは常に張らないように意識しましょう
ただし、リードは常に張らないように意識しましょう。重要なのは「常にリードを緩ませながらお散歩をすること」にあります。わんちゃんが引っ張ったらとにかく飼い主様は立ち止まりましょう。わんちゃんも歩きたがって引っ張ろうとしますが、ここで飼い主様が根気負けして歩き出したり、引っ張ってしまうとトレーニングの意味がありません。引っ張り癖のあるわんちゃんは既に「お散歩は引っ張るもの」と学習してしまっているので、これは根気がいることですが、何度も繰り返すうちにわんちゃんも次第に正しい散歩の方法を理解していきます。
しかし、先述したように、リードを引っ張った状態のわんちゃんの首への負担は相当なものです。どうしてもわんちゃんが諦めず引っ張り続ける場合は、その日のお散歩を中断し、後日トレーニングを再開する、というメリハリをつけることも大切です。
また、リードを適切な長さに調節することも心がけましょう。長すぎるとわんちゃんとアイコンタクトが取りづらく、短すぎて思わずわんちゃんの首に負担がかかってもいけません。理想の長さとしては1mくらいが良いでしょう。
ハーネスを使用するという選択肢
犬が引っ張っても首への負担を抑えられます
引っ張る癖が強くなかなか改善しないわんちゃんや、飼い主様が引っ張られるほどの力の強い大型犬、気管が弱っている高齢犬の場合、首輪をハーネスに変える方法も一つの手段です。わんちゃんが引っ張っても首への負担を抑えられますし、ハーネスは胴体に装着するため、首輪が抜けやすい子にも向いていると言えます。
また、紐だけのもの、洋服と一体化しているもの、前の部分にだけ装着するエプロンタイプのものなど、様々なタイプのハーネスがあるため、色んなわんちゃんに対応可能です。ただし、ハーネスにもデメリットがあります。
引っ張り癖を直すという根本の解決は難しくなります
ハーネスはわんちゃんが引っ張っても首に負担がかからないため、わんちゃん自身も苦しさを感じにくくなり、ますます引っ張り癖が強くなる可能性があります。トレーニング中、飼い主様が引っ張って合図してもその感覚も伝わりにくいため、直すという根本の解決は難しくなります。他にもリードが前足に絡みやすくなったり、ハーネスが当たる部分の被毛が摩擦でこすれたりなど、わんちゃんによって合う・合わないがあるので、見極めが必要です。高齢犬やヘルニアになりやすいダックスフンドなどは、首に負担がかかると病気になりやすいため、かかりつけの獣医師さんに相談するのも良いでしょう。
その子の健康状態や、性格、トレーニングの有無、散歩の状況などから、必要に応じて首輪とハーネスを使い分けたり、年齢によって使うものを変えていくのも良いかもしれません。どの道具にもメリット・デメリットがありますので、わんちゃんに合ったものを選んであげることが大切です。
まとめ
愛犬との生活の中で、お散歩は飼い主様とのコミュニケーションに欠かせない大事なルーツです。わんちゃんにとってお散歩は、運動不足解消、トイレ、ストレス発散、他の動物との触れ合いなど、様々な役割を果たしています。
しかし、愛犬に毎回引っ張られて大きな労力を伴うのは、飼い主様にとっても大変なことですし、わんちゃんにとっても健康を害することがあるのは嫌ですよね。引っ張ることが癖になっているわんちゃんの行動を正すのは根気がいることですが、しっかりとトレーニングを行い、正しいお散歩の方法を上書きしてあげましょう。
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