犬が飼い主さんに飛びついて飼い主さんの口元をなめるのはどうしてかご存知でしょうか。実は犬が飼い主さんの口をなめるのは、祖先であるオオカミの行動が関係しているのです。今回は犬が飼い主さんの口をなめる理由について解説していきます。
犬が飼い主さんの口をなめる3個の理由
犬が口をなめるのは愛情表現
飼い主さんが帰ってきたときに、犬が飛びついて口をなめてくるのは愛情表現をしているからです。飼い主さんに会えたことがうれしくて尻尾を振って、顔や口をなめて飼い主さんのことが大好きというアピールをしています。犬は飼い主さんに従順な動物で、飼い主さんに会えたときに撫でてもらえたり、声をかけてもらえると安心して心が穏やかになります。
子犬のときに飼い主さんが口をなめられてニコニコうれしそうにしたら、犬はそれを覚えて同じことを繰り返します。
犬は飼い主さんの気持ちや行動を敏感に読み取ります。そのため、飼い主さんが悲しくて泣いていたりすると、いつもと違う飼い主さんの様子を感じ取ってそばにきて顔をなめてくれたりします。
犬が飼い主さんの口をなめるのは、飼い主さんが笑顔になってくれるのが分かっているからです。大好きな飼い主さんに笑顔でいてほしい、帰ってきてくれてうれしいという気持ちで口をなめてくるのです。犬はこうして飼い主さんへ愛情を真っ直ぐに向けて表現してきてくれます。
お腹がすいたとのアピールで口をなめる
犬の祖先であるオオカミは、子育てをするときに子どもに離乳食を与えて育てます。親が肉を食べて、いったん飲み込んで消化したものを吐き出して子どもに食べさせますが。子どもはお腹がすくと、親の口をなめて「ご飯ちょうだい。お腹がすいたよ。」とアピールします。
このオオカミの行動の名残が今でも犬の遺伝子に残っていて、飼い主の口をなめることで「お腹がすいた」とのアピールになっていると考えられています。
敬意を示しているから口をなめる
オオカミの子どもはお腹がすくと大人の口をなめてご飯を催促していましたが、この行動が「リーダーへ服従する」という意味をもつようになっていきました。
このように、犬の祖先であるオオカミは、下位のものが上位のものの口をなめることで敬意を表していました。その行動が犬の行動として残っていて、野生のときと同じように飼い主さんをリーダーとして認めている場合は口をなめます。
犬に口をなめられたら病気に感染する可能性がある!?
愛犬が口をなめてくる行動は犬からの愛情を感じるため、飼い主さんとしてはうれしい行動でしょう。
しかし、犬が口をなめることで病気に感染する恐れがあります。この病気を「人獣共通感染症(ズーノーシス)」といい、この病気は犬だけではなく、他の動物にも感染する可能性があります。その病原体は細菌やウイルス、寄生虫などです。主な病気は以下のものになります。
パスツレラ症
人間に感染する人獣共通感染症の中で、特に注意が必要な病気に「パスツレラ症」という病気があります。
犬の口内に保有しているパスツレラ菌は、全体の75%の犬が保有しているといわれています。この菌は常在菌なので、犬が感染しても症状が現れることはないのですが、人間が感染すると皮膚が腫れたり痒くなったり、咳が出ることがあります。
ひどくなると骨髄炎、肺炎、敗血症などを引き起こすことがあります。健康な成人であればそれほど問題はありませんが、子どもや高齢の方や免疫力が落ちている人は注意が必要です。
カプノサイトファーガカニモルサス症
カプノサイトファーガカニモルサスという菌が犬の唾液には常在しています。犬が口をなめることで、カプノサイトファーガカニモルサス症に感染する恐れがあります。
発症例はほとんどないのが現状ですが、感染すると発熱や倦怠感、腹痛が現れます。ひどくなると髄膜炎や敗血症を引き起こして、多臓器不全や敗血性ショックに進行して命に関わることがあります。
イヌ・ネコ回虫症
犬や猫のお腹の中にいる寄生虫を「回虫」といいます。犬のお腹に回虫がいた場合、お尻のあたりに回虫の卵がついているのを犬がなめ、口についている状態で飼い主の口をなめて感染します。
この病気は身体が弱り、免疫力が落ちているときに感染しやすくなるので注意が必要です。回虫に感染すると、体内を移動して発熱や肝炎、肺炎を引き起こすことがあります。
アメーバ赤痢
赤痢アメーバはサルモネラ菌と同じく爬虫類も保有していることが多いのですが、犬に寄生しても症状が出ません。
人が感染すると粘血便や下痢を引き起こします。ひどくなると死亡することもある怖い病気で、発展途上国など世界中では毎年4~7万人程の人がこの病気で亡くなっています。
レプトスピラ症
この病気は「病原性レプトスピラ」という細菌に感染して起こるものです。ネズミが保菌しているので、ネズミの尿や糞から犬が菌に感染することがあります。
犬がこの病気に感染したら、尿から菌が出ます。犬がおしっこをしたあとに、お尻をなめた口で人間の口をなめると人への感染の恐れがあります。
レプトスピラ症になると頭痛や発熱などの風邪に似た症状が表れ、ひどくなると腎障害や肝障害が出て出血が起きることがあります。
犬が口をペロペロなめるのはかわいいけどやめさせたほうがいい?
免疫力が弱っている時は犬が口をなめることで病気感染の恐れがある
犬が口をなめてくるのをやめさせたほうがいい理由のひとつに、前述したような病気感染があります。健康なときは感染して症状が出ることはほとんどありませんが、身体が弱っているときや免疫力が少ない高齢の人や子どもは感染する恐れがあります。
犬のことをどんなに愛していたとしても、犬は人間に害がある菌を持っていることを忘れないようにしなければなりません。犬の手入れをしたりトイレの片付けをした後は、必ず手洗いを忘れないようにしましょう。
犬が口を舐めないようにしつけよう!その方法とは?
愛犬が口をなめてきたとき、そのままやらせていたら犬は人間の口をなめてもいいのだと思います。その行動を家族だけでなく、来客があったときにお客さんにもしてしまうかもしれません。病気の感染も考えると、犬が人の口をなめることをやめさせるようにしつけたほうがいいでしょう。
しかし、犬にとって飼い主さんへのキスは愛情表現です。犬が口をなめてきたとき、叱ると「叱らないで。お願い。」と余計口をなめてくることがあるので、叱るのは逆効果です。
では、どのようにしつけをしたらいいのかというと、「無視してその場を立ち去る」ことです。犬が口をなめてきたら黙ってその場を立ち去り、犬が落ち着いたら犬のもとへ行き褒めてあげます。これを繰り返すことで犬は、口をなめたら相手にしてもらえず、口をなめるのをやめたら褒めてもらえることを学びます。
また、犬が口をなめようとしてきたら「おすわり」「待て」などの指示を出して興奮を落ち着けるのも良い方法です。犬が口をなめようとするのをやめて、指示に従いおすわりしておとなしくなったら褒めてあげます。この方法を繰り返すことで、犬は口をなめなくなるでしょう。
しつけのときに、怒鳴って行動をやめさせようとするのはいけません。犬は飼い主さんへの愛情表現として口をなめようとしているのです。
大好きな飼い主さんに怒鳴られたら悲しくてストレスを抱えることになってしまいます。
普段から犬と飼い主さんの主従関係がしっかりしていれば、しつけることで愛情が薄れることはありませんので安心して犬のしつけを行いましょう。
犬には口をなめる以外の愛情表現をしてもらおう
犬が飼い主さんの口をなめるのは、祖先であるオオカミだった頃の名残です。口をなめる行動は飼い主さんへの愛情表現であり、リーダーとして認めていることの証でもあります。
この行動は自然なものであり、犬からしたら本能で行っていることなのですが、病気の感染を起こす原因になることを考えて、口をなめないようにしつけたほうがいいでしょう。
愛情表現は口をなめる以外にもありますので、キス以外でスキンシップをとるようにしていきましょう。
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