「咳」は治療もせずに治ることもあれば、重症化してしまうこともある怖い症状です。咳の原因はストレスで免疫機能の低下などにより引き起こされるものから、気管支炎、肺炎などの呼吸器疾患、心臓病から引き起こされるものまであります。
咳は呼吸に関与するものなので放置すると呼吸困難を引き起こすこともあり、軽く見てはいけません。
ここでは犬が咳をする原因や危険な病気の可能性についてご紹介します。
>>>愛犬のくしゃみも気になる時はコチラも合わせてご覧ください!
関連記事:犬のくしゃみが止まらない! 考えられる原因や病気は?
犬の咳は病気?危険な状態になる前に病院へ
犬は喉の刺激により生理現象として咳をすることもありますが、呼吸器や心疾患の延長で咳といった症状が現れることもあります。咳は治療をせずに完治することもありますが、すぐに動物病院を受診し治療をしなければ命にかかわることもあります。
犬が咳をしていて、あまりに頻度が多い、他にも症状が見られる場合はできるだけ早めに動物病院を受診しましょう。
犬の咳はケンケンといった乾いた咳、ゴホッという痰が絡んだような湿った咳など様々です。この咳の症状により原因も異なります。犬の咳の仕方を携帯電話などで録画しておくと、動物病院を受診した際に原因の究明に役立つこともあります。
ガチョウのようにガーガーいう咳は気管虚脱を疑おう
犬がガチョウのようにガーガーと咳をしている場合は「気管虚脱」という病気を引き起こしている可能性があります。
気管虚脱は気管が潰れてしまい、呼吸が苦しくなる症状で、首輪などで気管を強く圧迫することで物理的に引き起こされることもあります。
気管虚脱は気管が狭まるためガーガーという咳が見られます。他にもいびきがひどくなったり、呼吸困難などの症状も見られます。治療法は気管の炎症などを抑えるための内服治療を行い、気管虚脱を治すためには外科手術が必要になります。気管の手術となると難易度も上がるため、治療方針はかかりつけの獣医師さんとしっかり話し合い相談しましょう。
>>>気管虚脱を防ぐためにもリードの引きすぎには注意しましょう!
関連記事:散歩中に犬が引っ張る際の犬の気持ちと引っ張り対策・対処法をご紹介
犬の咳とくしゃみは鼻炎?犬ジステンパーという危険な病気かも
犬の咳、くしゃみ・鼻水などの症状は鼻炎のことが多いです。
しかし、子犬や老犬などの免疫機能が低い犬やワクチンを接種していない犬では犬ジステンパーが疑われます。
犬ジステンパー感染症はかなり感染力の高い感染症で、ワクチンで予防することができます。発熱、咳・くしゃみ、食欲不振、下痢や嘔吐などの症状が見られ、進行すると脳炎を引き起こし痙攣や発作などを起こす死亡率の高い感染症です。
治療では今出ている症状に対して治療を行っていくため、犬の体力勝負になります。治療と同時に、飼育環境を清潔にし、食事管理を行い、犬自身の免疫力を高めていきます。
ケンネルコフは犬の風邪!ワクチンで予防できる
ケンネルコフは感染性呼吸器疾患のことで、犬の風邪とも言われています。
咳だけでなく、食欲不振、元気がなくなる、進行すると呼吸困難などの症状も見られます。
ケンネルコフは免疫力向上のためにインターフェロンの投与やネブライザー治療を行います。最初は軽い咳から始まりますが、重症化することもあるため注意が必要です。ケンネルコフを防ぐのは難しいですが、しっかりワクチン接種を行うことで一部のウイルスから発症するケースを防ぐ、もしくは発症しても軽度に済ますことができます。
>>>わんちゃんのワクチンについての詳細はコチラの記事をご覧ください!
関連記事:犬のワクチンの種類や病気との関連性を分かりやすく解説!
老犬の咳は心臓病かも…僧帽弁閉鎖不全症の可能性大
7歳以上などの老犬の頃に出る咳は心臓病の可能性があります。
僧帽弁閉鎖不全症は老齢の犬に多く見られます。9歳以上の犬で約2割、10歳以上で約4割の犬が患っていると言われています。特にキャバリア・キング・チャールズスパニエルは遺伝的に心臓疾患を引き起こしやすいため注意が必要です。
僧帽弁とは左の心房と心室の間にある弁のことで血液を全身に送るときに血液が逆流しないように働いています。僧帽弁閉鎖不全症の症状は咳、うっ血による心臓の拡大、呼吸困難、散歩を嫌がる、失神などです。
僧帽弁閉鎖不全症は内服治療と手術で治療を行います。心臓の手術は難易度も高く、老犬であれば手術リスクも高まります。そのため、内服で心臓肥大や他の症状をコントロールしながら治療を行うことが多いです。
>>>愛犬の衰えを把握することができるサインの見つけ方はコチラ!
関連記事:犬の老化がわかる10個のサインと症状!高齢の愛犬と幸せに暮らすためにできること
心臓病が進むと犬の咳が止まらない肺水腫に
心臓病が進むと肺水腫を引き起こす可能性があります。
肺水腫は肺に水が溜まってしまう状態のことです。肺は酸素と二酸化炭素の空気交換を行うため、生きるためにとても重要です。
肺水腫は咳、呼吸困難、運動したがらないなどの症状が見られ、症状が進行するとチアノーゼが見られます。治療として利尿剤や血管収縮剤などを投与し肺にある水を外に排泄させ、同時に心臓病の治療を行います。
蚊から感染するフィラリアは事前の予防がマスト
フィラリア感染症は、咳をしたり運動を嫌がったり、胸水、腹水など様々な症状が見られ、急に突然死してしまう場合もある恐ろしい病気です。
フィラリアに感染した犬に蚊が吸血した際にフィラリア子虫が蚊の体に侵入し成長し、次に未感染の犬に吸血した際に犬の体の中に侵入して、2,3ヶ月かけて成長しながら血管内に入り込みます。
フィラリア子虫が血管内に侵入する前に予防薬で駆虫すれば感染を防ぐことができますが、そのまま放置してしまうと血管から心臓や肺など寄生します。
フィラリアに感染してしまった後の治療としては内服療法と外科療法がありますが、大きなリスクが伴います。
内服療法では血管内のフィラリアを駆虫し徐々に寄生数を減らす方法ですが、薬によって死んだフィラリアが血管内に詰まって悪化を招く可能性もあるため注意が必要です。外科治療では首にある血管から心臓に寄生しているフィラリアを少しずつ取り除く手術を行います。
外科治療は全身麻酔などによるリスクが高いため、最近では内服療法で治療していくことが多いようです。
フィラリア感染症は100%予防できる病気です。フィラリア予防薬は、フィラリアの成長過程のうちの一定期間にしか効果を発揮しないため、毎年蚊が発生した1ヶ月後〜蚊がいなくなってから1ヶ月後までは、毎月予防薬の摂取を行いましょう。
>>>フィラリア予防についての詳細はコチラの記事をご覧ください!
関連記事:犬のフィラリア予防の時期はいつごろ?知っておきたい投薬開始時期と対策
病気以外の原因かも?犬が咳をする理由は他にもあった!
犬の咳は病気以外にも原因があります。病気であれば動物病院で治療を行えば少しでも改善されることも多いですが、病気以外に原因がある場合は飼い主さんが何らかの改善をしなければいけません。
ここでは犬が咳をする時の病気以外の原因についてご紹介します。
のどに何か詰まらせているなら応急処置を
犬の咳は喉になにか詰まっている時に症状として見られることがあります。喉になにか詰まってしまっている場合、窒息してしまったり、飲み込めたとしても再び胃や腸で詰まってしまうなど、命に関わる症状を引き起こす可能性があります。
犬の口を下に向けて抱きあげお腹の辺りを支えながら喉に詰まったものを取り出すようにしましょう。何度か挑戦し吐き出さないようであればすぐに動物病院を受診しましょう。
首輪が犬の気管を刺激して咳き込むのかも
犬の咳は気管の刺激により引き起こされることもあります。首輪がきつかったり、散歩時に強く引っ張る犬などは首輪が気管を刺激し、咳が出るようになります。長期間続くと気管虚脱などの気管の病気を引き起こす可能性もありますので、首輪ではなく胴輪に変更するなど対策しましょう。
鼻が利く犬は強烈な匂いで病気になることも
犬は人間と比べて嗅覚が発達しています。そのため、臭いにも敏感で、人間にはあまり気にならない臭いでも強く感じることがあります。芳香剤や香水、他にも匂いの強いものは犬に対して刺激になり病気になることもあります。
ストレスになったり、嗅覚の機能低下、咳やくしゃみ・鼻水などの症状が見られることもありますので、犬の前ではできるだけ匂いの強いものは使わないようにしましょう。
犬の咳が止まらないときの対処法① 食事・薬
犬の咳が止まらないと心配してしまいますよね。犬の咳が止まらない場合対処法についご紹介します。
甘い咳止めのシロップで呼吸を落ち着ける
犬の咳が止まらない時には咳止めのシロップで呼吸を落ち着けましょう。咳止めのシロップは動物病院でしか手に入らないので、一度動物病院に受診し処方してもらいましょう。中には風邪薬のようなものが市販で販売されていますが、犬の咳の状態を診て処方してもらうことが一番効果的ですので、動物病院を受診しましょう。
咳止めシロップの鎮静効果は副作用にもなり得る
咳止めシロップには鎮静効果がありますが、副作用になることがあります。鎮静効果で咳を鎮めることができますが、鎮静効果により眠りすぎてしまったり、元気がなくじっとしているなどの症状が副作用として見られることがあります。
咳止めシロップを飲ませたあとになにか症状が見られる場合は出来るだけ早く動物病院に電話し、相談してみましょう。
>>>錠剤のお薬が処方された時はコチラの記事を参考にしてみてください!
関連記事:愛犬のおやつの選び方!4つの基準ポイントとおすすめのおやつ4選
薬は心配…犬にはちみつを与えても大丈夫?
薬は毒になることがあります。普段健康であまり薬を飲ませることがない場合は、薬を使うのに抵抗がある飼い主さんもいます。
はちみつは犬の咳や癌などに効果があるという説があります。しかし、はちみつにはボツリヌス菌がふくまれているためボツリヌス症を引き起こしてしまうことがあります。免疫力が低い子犬や老犬は避けたほうが良いかもしれません。
犬の咳が止まらないの対処法② ツボ・マッサージ
犬の咳が止まらないときは薬や食事などに頼る以外にもツボやマッサージを行うことで少し改善されることもあります。ここでは、犬の咳が止まらないときの対処法についてご紹介します。
気管虚脱の犬には背中のツボを押してあげよう
気管虚脱の犬には「膈兪(かくゆ)」というツボです。このツボは、胸側にあり、肋骨の下から6と7番目の間にあります。ツボを押す強さは目をかくぐらいのゆるめの強さで押しましょう。
この膈兪というツボは、逆くしゃみにも効果があるとされているので、是非試してみてください。
顎のツボを押してあげれば呼吸器系が強化される
顎にある「廉泉(れんせん)」というツボを押してあげると呼吸器系が強化されます。このツボは顎の骨にあるくぼみにあるツボです。気管虚脱や呼吸器疾患、心臓病からくる咳などに効果があるとされています。
>>>呼吸器以外には効果が満載のマッサージについてはコチラ!
関連記事:犬が喜ぶマッサージのツボを伝授!犬にも最高の癒しを
もしものときに覚えておきたい心臓マッサージ
犬も万が一心肺停止の状態になったときには心臓マッサージを行うことが必要になります。まずは犬の右側を下にして寝かし、呼吸を確認します。呼吸も心拍も停止していれば心臓マッサージと人工呼吸を行います。
口の中を確認し、異物が入っていないか確認してから、気管を真っ直ぐにし空気を通りやすいように寝かせます。犬の口を両手で挟み、鼻から空気を入れます。しっかり肺へ空気を届けるように、肺が膨らむのを確認しながら息を入れます。再度、呼吸や心臓が動いていない場合心臓マッサージを行います。
左の肘の後ろに心臓があり、心臓の場所を大型犬であれば手のひらで小型犬であれば指を使って10秒間で15回を目安にマッサージを行います。あまり強く押してしまうと肋骨が折れてしまうので、力加減には注意しましょう。
犬の咳の原因を見極めて正しい対処を
ここでは犬が咳をする原因や危険な病気の可能性についてご紹介しました。犬の咳には病気である場合や他に原因があることもありますので、その原因を見極めることが重要です。
犬自身の治癒力で完治してしまうこともありますが、咳の症状が重症化してしまいチアノーゼなどの重篤な症状を引き起こしてしまうこともあります。出来るだけ早く動物病院を受診し、治療を行いましょう。
記事ランキング
まだデータがありません。