愛犬は、私たち人間よりもずっとはやく歳をとります。高齢犬になると、元気だった成犬の頃と比べ、様々な部分に老化現象が現れます。食欲低下も、その一つです。食事は愛犬が生きるために欠かせないものですので、食欲不振を放って置くわけにはいきません。老犬はなぜ食欲不振になってしまうのでしょう。食欲を促すには、どのような方法があるのでしょうか。この記事では、老犬の食欲不振の理由や、食べてもらうための工夫などをまとめました。
老犬がなかなか食べない「食欲不振」の主な予想される理由
年齢を重ねると、いままで食べていたフードを食べなくなってしまうケースがあります。
餌を食べないことは、当然健康上良くありません。ここでは、老犬が食欲不振になってしまう原因を紹介します。
加齢に伴う「食の好みの変化」
犬も歳をとると、内臓機能をはじめ体の様々な面に衰えが見られるようになります。
運動量が減る、内臓機能が衰えることから、食欲自体が低下することは本能的なものです。
また、運動量が減り便秘しがちになることや、老化により味の好みが変わることも食欲不振になる理由として考えられます。老犬に理想な食事内容は、少ない量でもしっかりと栄養を摂ることができることです。
1日の給餌量をきちんと食べられないと栄養が補いきれないため、トッピングなどをして栄養の補助や嗜好性を高めてあげる必要があります。
高齢になると、味覚や嗅覚も衰えるため、いつものフードにトッピングして味や香りを工夫してあげることも大切です。
おすすめトッピングその1:キャベツ
運動量が減ることで便秘になりがちな高齢犬には、食物繊維が豊富に入ったキャベツをトッピングすることもお勧めです。
キャベツには抗酸化作用のあるビタミンCも含まれているため、老化の抑制や免疫力を高める働きもあります。ビタミンCは加熱すると壊れてしまうため、生でそのまま与えるか、軽く蒸すなどして与えるのがおすすめです。
また、食べやすいよう細かく切って与えてください。
犬の食欲には「食感」も重要になりますので、キャベツのシャキシャキした食感は嗜好性を上げるためにも効果的です。
おすすめトッピングその2:ササミ、鶏胸肉
老犬は筋力が弱りがちです。
きちんと動物性タンパク質を摂取しないと、寝たきりになってしまう可能性もあります。
ササミや鶏胸肉は、高タンパクで低脂質なため、老犬に与えるタンパク源として適しています。
また、消化も良く栄養も豊富ですので、是非与えたい食材です。与える際には火を通し、食べやすい大きさにカットしてください。
茹でた際のだし汁も、冷まして水分として飲ませたり、フードにトッピングしたりすることで香りや味を強くすることが可能です。
注意点として、もともとドッグフードにも動物性タンパク質は含まれているため、与え過ぎはタンパク質の過剰摂取に繋がります。
与える量を調整したり、ドッグフードの量を減らしたりして、過剰摂取にならないよう注意しましょう。
おすすめトッピングその3:サツマイモ、かぼちゃ
高齢犬になると、味覚も衰えてくるものです。犬は甘味が好きですので、甘みのあるトッピングも有効です。
かといって、砂糖などの調味料やおやつは栄養が偏ってしまい良くありません。
また、肥満になってしまうと足腰の弱った高齢犬は、体に負担がかかってしまいます。
そこでおすすめなのが、サツマイモやかぼちゃです。
サツマイモはスイーツのように甘みのある種類もあるほどの芋類です。また、栄養も豊富で食物繊維を始め、ビタミンC、カリウム、ビタミンB群、ミネラル類が豊富に含まれています。血糖値が上がりにくい低GIですので健康にも良い天然の甘み成分です。
かぼちゃも甘みがあり、栄養満点の食材です。風邪予防や免疫力アップ効果のあるβカロテンをはじめ、食物繊維、ビタミン類、カルシウム、鉄分、リグナンなどが含まれます。
リグナンは大豆イソフラボンと似た効果があり、被毛の健康に良い成分です。
サツマイモやかぼちゃは、天然の甘みで嗜好性を高めるほか、栄養が豊富なので是非与えたい食材です。
与える際は火を通して柔らかくし、細かくカットするかミキサーなどでペースト状にしてトッピングするとおすすめです。
加齢に伴う「食事の回数や食事量の変化」
歳をとると、一度に食べることのできる量が減るほか、消化器官も衰えるため、消化吸収もしにくくなります。
そのため、1日に必要な給餌量を愛犬の様子を見ながら、3~4回に分けて与えることで、消化吸収をすることができます。
一度に食べきれる量を与え、下痢や嘔吐がないか様子を見ます。万が一消化不良を起こすようであれば、一度に与える量が多すぎる場合があります。
そのような場合には一度に与える量を減らし、代わりに給餌回数を増やしてみましょう。少しずつ量や回数を調整し、愛犬がしっかり食事を摂れるように工夫をすることが大切です。
加齢に伴う「咀嚼機能や消化機能の変化」
私たち人間が高齢になると噛む力や飲み込む力が弱ってくるように、犬も咀嚼機能や嚥下機能が低下します。
犬は餌を噛んで食べるという習性がないため、丸呑みにしてしまうことがほとんどです。
成犬の場合には問題ありませんが、高齢になるとドッグフードが喉に詰まってしまう場合があります。ドッグフードを人肌程度のお湯で柔らかくして与えると、老犬でも食べやすくなります。
犬にとっても暖かいほうが、食欲が増すことが多く、また、お湯でふやかすことで水分補給も同時に行うことができます。
ふやかす柔らかさは愛犬の状態によって調節してください。
老犬には「食事介助」が必要な場合も
自力で食べることができなくなると、人間が食事を手伝う食事介助が必要になる場合もあります。
ここでは、高齢犬向けの食べやすいフードや食事介助法を紹介します。
噛みやすく消化しやすいウエットタイプのフードを与えましょう
成犬の場合にはドライフードが良いとされますが、噛む力や飲み込む力の弱い高齢犬には、ウェットフードを与えることもおすすめです。
ウェットタイプは柔らかく丸呑みにしてしまっても消化がしやすく、高齢犬でも食べやすいドッグフードです。
また、香りも強いため嗜好性も高くなります。
そのまま与えて食べない場合には、少し温めてあげると食いつきがよくなる場合があります。
ウェットフードを与える際の注意点は、添加物を使用している商品が多いため、なるべく無添加のものを選ぶようにしてください。
ドライフードの場合はお湯でふやかしてから与えましょう
犬は餌をかみ砕いて飲み込むという習性はありません。ドッグフードは大体の場合、丸飲みしてしまいます。
成犬の場合は問題ありませんが、高齢犬になると飲み込む力が弱まるため、喉に詰まってしまう場合があります。
また、顎の力も弱まるため、硬い粒は食べにくい傾向にあります。
そのままでは食べにくいドライフードは、ぬるま湯で柔らかくして与えると食べやすくすることができます。お湯でふやかすことで、同時に水分も補給することができます。
熱いお湯を使用すると、ドッグフードの栄養が壊れてしまうため、必ず人肌程度のぬるま湯を使用するようにしてください。
また、ぬるま湯のほかにもささみなどのだし汁を使用すると、香りが増し嗜好性を高めることが可能です。ふやかす硬さは、愛犬の状態によって調節してください。
自立できない場合、食事中は体を食事台などで支えてあげましょう
足腰が弱った高齢犬は、自分で食事場まで行けない場合や、餌を食べる姿勢をとれない場合があります。
そのような場合、餌を皿ごと口元に運んであげてしまいがちですが、大勢がきちんと縦になっていないと、胃に食物が届かず食道に残ってしまう場合があります。
食道に食べ物が残ってしまうと、食道炎などのリスクが高まります。
食事の際は、支えながら体を立たせるか、立てない場合は伏せの体勢にして、正しい姿勢をキープさせてあげることが大切です。
犬が吐く場合は
きちんと飲み込めずに吐いてしまっている可能性が
人間も飲み込む力が弱くなると、気管に食べ物が入ってしまい肺炎を起こしてしまうことがあります。
これは高齢犬も同様で、飲み込む力が弱くなると、気管に入ってしまったり、飲み込み切れずに吐いたりしてしまう場合があります。
この場合は、嘔吐ではなく食道で戻してしまう突出という状態ですので、吐いたものは消化されておらず、胃液の臭いがしないことが特徴です。犬の場合は、嘔吐か突出かによって、考えられる病気をかなり絞ることができるといわれています。
高齢犬が吐いた場合には、胃の内容物を吐いたのか、食道で戻してしまったのか、よく確認するようにすると良いでしょう。
過度に吐く場合は専門医に診てもらいましょう
毎回食べたものを吐いてしまう場合や、嘔吐が続く際には、病気の可能性があります。
急性胃炎や胃腸炎をはじめ、消化器系の疾患の可能性が高いため、様子がおかしいと感じた場合には動物病院を受診するようにしてください。
老犬におすすめの食べやすいレシピ
食欲が落ちた際には、愛犬の食べやすい食事を与えることが大切です。なかなか好みのフードが見つからない場合には、手作りをしてみる方法もあります。
ここでは、高齢犬用の食べやすい手作りフードを紹介します。
食べやすく消化されやすい「老犬向け健康おかゆ」
【材料】
・カジキまぐろ:切り身一切れ
・さつまいも:小1個
・ごぼう:細いもの半分
・にんじん:小 半分
・しいたけ:2個
・大豆水煮:大さじ3
・お米:2合
・本だし:小さじ1杯
【作り方】
1. 全ての野菜をみじん切りにする
2. お米をといで、大豆とカジキまぐろを入れる
3. 調味料を入れ、米2合に対し水は4合分(お粥モードの水量参考)入れる
4. お粥モードにして炊き上がれば完成
ドッグフードを食べなくなってしまった高齢犬のために思案し作られた犬用おかゆです。
量は中型犬でおよそ4日分です。
水の量は愛犬の状態に合わせて調節してください。
また、米が入っていますので、アレルギー反応はないか、消化はきちんとできているかなどを考慮し、最初は少量を与えて様子を見るようにすると安心です。
まとめ
私たち人間も高齢になると食欲が低下し、噛む力や飲み込む力も衰えます。
そのため、柔らかめの食事にしたり、消化の良い内容にしたりする、介護食を試すなど様々な工夫をするでしょう。
犬の高齢も人間とほとんど変わりはありません。
愛犬が高齢になって食欲が低下した場合には、愛犬が食べやすく、それでいて栄養がきちんと摂れるよう、色々な工夫をしてみることが大切です。
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